こんにちは、Dayです!
このブログでは、最新の脳科学論文を一般の方にも楽しめるようにわかりやすくまとめています。
本日のテーマは「科学が明かす“やる気”と“幸せ”の関係性」です。
「やる気があると人生が幸せになるのか?」「幸せを感じるからやる気が出るのか?」──誰もが一度は考えたことのある問いに、心理学の最新研究が答えを示し始めています。
今回紹介するのは、アイスランドの成人を対象に行われた大規模調査。情熱や自信(自己効力感)、やり抜く力(grit)、そして人生の意味や幸福感がどのようにつながっているのかが明らかになりました。
意外な男女差や、これまで注目されてきた「成長マインドセット」の意外な一面など、読んでいてワクワクする発見が詰まっています。
本記事は、以下の研究をもとにしました。
Sævarsson, S. B., Ólafsson, R. P., Magnusson, A., Jonsson, A., & Sigurvinsdottir, R. (2025). Motivation, meaning and well-being: Exploring gender differences and associations in participants from Iceland. Acta Psychologica, 258, 105177.
https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2025.105177?utm_source=chatgpt.com
やる気と幸せはつながっている?
「やる気があると毎日が楽しく感じる」「逆に、落ち込んでいると何をする気にもならない」──そんな経験、誰にでもありますよね。
実際に心理学の世界でも、やる気と幸せはお互いに影響し合っているのではないか、と長年研究されてきました。
では本当に「やる気が幸せを生む」のか? それとも「幸せだからやる気が出る」のか?
この問いはシンプルなようでいて、まだはっきりと答えが出ていないテーマの一つです。
今回紹介する研究では、アイスランドの成人を対象に、やる気を支える要素(情熱・自信・やり抜く力など)と、幸福感や人生の意味との関係が詳しく調べられました。
その結果、私たちが普段なんとなく感じている「やる気と幸せのつながり」が、科学的にも裏付けられることが分かってきたのです。
アイスランドで行われたユニークな調査
今回の研究が行われたのは、北欧の小国アイスランド。実はこの国、世界でもトップクラスに「男女平等」が進んでいる社会として知られています。そんな環境で「やる気」と「幸せ」の関係を調べるのは、とてもユニークな試みと言えます。
研究には 479人の成人(女性336人、男性143人) が参加しました。平均年齢は32歳ほどで、若者から社会人まで幅広い層が含まれています。調査方法はオンラインの質問票で、SNSを通じて募集された人々が協力しました。
調べられたのは、次のような心理的な要素です:
- 情熱(どれだけ物事に熱中して取り組むか)
- 自己効力感(「自分ならできる」という自信)
- やり抜く力(grit)
- 成長マインドセット(努力すれば成長できるという信念)
- 人生の意味や生きがい
- 幸福感やポジティブ/ネガティブな感情
これらを総合的に測ることで、「やる気の源」と「幸せの感覚」がどのようにつながっているかを分析したのです。
男女でちがう?「情熱」と「自信」の差
調査の結果、男女の間でいくつかの興味深い違いが見つかりました。
とくに大きな差が出たのは 「情熱」と「自己効力感(自分ならできると思える自信)」 です。
- 情熱(Passion):男性の方が平均的に高く、「好きなことにとことん打ち込む姿勢」が強い傾向がありました。
- 自己効力感(Self-efficacy):こちらも男性の方がやや高く、「困難に直面しても自分ならできる」と信じる気持ちが女性より強めに出ました。
一方で、やり抜く力(grit)や成長マインドセット、人生の意味や幸福感については、男女差はほとんど見られませんでした。
つまり、「好きなことに情熱を注ぐ力」と「自分を信じる気持ち」には男女で違いがあるものの、幸せを感じたり、人生の意味を見出す点では性別に関係なく共通している、ということです。
この結果は、男女平等が進んでいるアイスランドでも差が見られた点で、研究者にとっても興味深い発見でした。
幸せのカギは「生きがい」と「自分ならできる」という気持ち
研究では、さまざまな心理的要素のつながりを詳しく分析しました。その結果、「人生の意味(生きがい)」と「幸福感」の関係がとても強いことが明らかになりました。
つまり、「自分は何のために生きているのか」「どんなことに価値を感じるのか」といった感覚を持つことが、日々の幸せにつながっているのです。
さらに、「自己効力感(自分ならできるという気持ち)」も、ポジティブな感情や心理的な充実感と強く結びついていました。小さな挑戦を乗り越えたり、自分の力で何かをやり遂げたりする経験が、幸福感を押し上げるのだと考えられます。
この結果は、私たちの日常にも分かりやすく当てはめられます。
- 「子育てを通じて人生の意味を感じる」
- 「仕事での達成体験が自信になる」
- 「趣味や学びに打ち込むことで生きがいを得る」
こうした体験が、私たちの心を前向きにし、幸福感を育んでいるのです。
意外な発見!成長マインドセットは孤立気味だった
近年の心理学や教育の世界では、「努力すれば成長できる」と信じる 成長マインドセット が大きな注目を集めてきました。
勉強やスポーツ、仕事においても「成長マインドセットを持つことが成功の秘訣」と語られることが多いですよね。
ところが今回の研究では、このマインドセットが 他の要素(情熱・自信・幸福感・生きがいなど)との結びつきが弱い という意外な結果が出ました。
たとえば「情熱」との関連はごくわずかで、自己効力感や幸福感との関連もほとんど見られなかったのです。
これはつまり、「努力すればできる!」と信じること自体は大切だけれど、それだけでは幸せや充実感には直結しない、ということを示しています。
日常生活に置き換えると、
- 「勉強すれば伸びる!」と信じていても、楽しさや自信が伴わなければ挫折しやすい
- 「がんばれば変われる!」と思っていても、人生の意味を感じられなければ幸せにはつながりにくい
そんな現実を映し出しているのかもしれません。
この研究から日常生活に活かせるヒント
心理学の研究は難しそうに見えますが、今回の結果は私たちの毎日にすぐに取り入れられるヒントがたくさんあります。
1. 「生きがい」を見つけることが幸せの近道
仕事や子育て、趣味など、「これが自分にとって意味がある」と感じられるものを持つことが、幸福感を大きく高めます。大きな目標でなくても構いません。小さな習慣や楽しみが「生きがい」になります。
2. 小さな成功で「自分ならできる」という気持ちを育てる
自己効力感はポジティブな感情と強く結びついていました。
毎日の中で小さな挑戦に取り組み、「できた!」という経験を積み重ねることで、自然と前向きな気持ちが生まれます。
3. 「やる気」と「幸せ」はお互いに支え合う
やる気が出れば幸せを感じやすく、幸せを感じればさらにやる気がわく──そんな好循環を意識すると、日常がもっと充実します。意識的に「やる気を高める行動」と「幸せを感じる瞬間」を両方増やすことがポイントです。
つまり、幸せは偶然にやってくるものではなく、自分で育てていけるものだということ。
この研究は、そんな前向きなメッセージを私たちに届けてくれています。
やる気と幸せの科学が教えてくれること
今回の研究から見えてきたのは、「やる気」と「幸せ」は切り離せない関係にあるということです。
とくに「人生に意味を感じること」や「自分ならできると思える気持ち」が、日々の幸福感を大きく左右していることが科学的に裏づけられました。
もちろん男女で少し傾向の違いはあるものの、幸せを支える基本的な仕組みは誰にとっても共通しています。
大切なのは、日常の中で「自分にとって意味のあること」に打ち込み、少しずつでも「できた!」という体験を積み重ねていくこと。
やる気と幸せはどちらか一方が先にあるのではなく、互いに影響し合いながら育っていくものです。
つまり、「やる気を育てれば幸せにつながり、幸せを感じればさらにやる気が湧く」──そんな前向きなサイクルを自分で作り出せるのです。
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